私はここ最近まで、自分を紹介するにあたり、演劇という言葉を持ち出すことは全く無かった。新しい知り合いだけでなく、昔からの知人に久々に会った場合でも、最近どう?という質問に演劇の話題は一切持ち出さなかったのである。この行動の背景には、演劇に対する自分の実力不足やキャリアの浅さから生まれる自信の無さがあって、どうしても自分を演劇人だと言うことができなかった。しかしそれ以上に、演劇人という存在が、社会のレールから外れた浮世離れした存在と感じていて、自分をその枠組みに入れることへの躊躇い故の行動であったと思う。演劇をしたい自分がいることは事実だが、その事実を後ろめたく思っていることも事実であった。
演劇への欲がこの後ろめたさを打ち消したのは、この劇団との出会いだった。特に決定的な出来事があったわけではない。ただ、自分の性格的には社会の一般道を歩く方が向いているのだが、整備されていないような荒れた道の方に惹かれると気づかされた。
今作のパブリックエネミーという言葉は、演劇人を端的に表している。こんな世の中で、そんなパブリックエネミーたちの貪欲さを見て、少しでも微笑んでくれる人がいますように。
2021年1月22日
縁劇集団ムコウミズ
俳優 長峰響子
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