第二十五回「生きるって、」
- 縁劇集団ムコウミズ
- 2021年3月15日
- 読了時間: 2分
久しぶりに、黒澤明の『生きる』を観た。やはり 志村喬 演じる 渡邊勘治 が、どうしようもなく良い。寡黙、口下手な男だが、それゆえに彼のあまり上手でない生き様が、余命という現実とともに哀愁を纏って染み込んでくる。あの顔は、いつみても絶妙。そして、その彼の喋らない”間”の持つ奥行きは、『生きる』と一口に語られるタイトルの、その言葉の背景、それが持つ意味の深さを物語っているように思う。そういったことは得てして、語ろうと思えば思うほど、どうしようもなく、言葉にできないのだ。そこに寡黙な男を投影するのは一つの作品としても、あざとく流石の一言。
「生きる」ってどういうことだろう。これほど簡潔かつ複雑な命題はない。いくら考えて答えが見つからなくても、明日は来るし、寿命も来る。3月11日のあの日、それまで当たり前と思っていたものが津波で全て流されてしまう。想像もしたくないし体験もしたくない。そんなことを体験した人でも、今日を生きてる人はいる。
10年。長いようで短いのかもしれない。いまだに、完全な復興は遂げられていない。それでも生きてる人はいる。
震災のためにできることも、生きることの答えもそうそう見つからないけど、自分のできることを一つ一つしていこうと思う。
『生きているようで、生かされているんだなぁ みつを』
もしかしたら、自分が生きているということが、誰かの生きる理由になっているかもしれないしね。
2021年3月15日
縁劇集団ムコウミズ
俳優 田 礼一

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