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第二十三回「あれから」

  • 執筆者の写真: 縁劇集団ムコウミズ
    縁劇集団ムコウミズ
  • 2021年3月13日
  • 読了時間: 2分

この文章を書いているのが2021年3月11日ということで、少し演劇から離れ、10年前のこの日を記したいと思う。


当時の私は小学校卒業を間近に控えた、福島っ子であった。その日はちょうど卒業式の練習だけでいつもより早めに学校が終わり、私1人と犬1匹が家でのんびりと過ごしていた。


そして起きた突然の地震。家にある全ての家具が倒れてくる中、歳で歩けなくなった愛犬を抱えて2階から転がりながら飛び出した。なんとか玄関から外に逃げて振り返った時、家が壊れていく光景をただただ呆然と眺めていた。 

しかしこのような状況であっても至って頭は冷静で、自分と大切な愛犬は生きている、その事実だけでもう十分だった。


以上が私のあの瞬間の記憶である。その前後の記憶は曖昧だが、あの瞬間だけは今でも鮮明に思い出せる。


あれから津波による被害や福島原発事故など、震災がもたらした影響はあまりにも大きすぎるもので、私には想像できないほどの傷を負った人達がたくさんいた。しかしながら、みんな復興という目標に向かって前向きに歩いていた。


その過程で、私の心の側には音楽や演劇、スポーツといった娯楽が存在した。おそらく他の人たちもそうだったのではないだろうか。


さて、震災から10年経った。私は今演劇に携わっている。誰かを勇気づけるなんて大層なことは私にはできないが、誰かに何か少しでも響くものを届けられたらと思う。まあこれも自己満足でしかないのだが。



2021年3月13日

縁劇集団ムコウミズ

俳優 長峰響子


 
 
 

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